自由になりたい

全てが嫌になって家から出た。

特に行く当てがあるわけでもなかったので、適当に歩いていつもの上野界隈にたどり着いた。

今日の東京の気温は10℃くらいでまだ冬の寒さが残るような気候だったが、不忍池には驚くほどのどかな雰囲気が漂っていた。みんな酒を飲んで談笑したり、咲き始めた桜の前で自撮りをしたり、スピーカーで音楽を流したり、と各々好きに(やりたい放題に)過ごしていた。

印象的だったのは、アジア人系のグループや、女装した男性のグループなど、様々なコミュニティが池の近くに集結していたことだ。その理由はよく分からない。

ともかく、みんなそれぞれの仲間と共に自由に過ごしていた。そして、その表情はとても柔和だった。

自分も、自由になりたいなと思う。いつもそんなことばかり考えている気がする。自由になるってなんだろう。自分を自分で縛り付けている糸をほどきたいのかもしれない。あるいは、ぐちゃぐちゃに絡まってもはやほどくことができないから、ハサミで切ってしまいたいのかもしれない。

ハサミを右手に握ったが、ひんやりしていた。