線を引くこと

同人誌制作の方で、編集長としてのタスクが一段落したので、ようやく組版に取り掛かっている。しかし、組版はやはり楽しい……アイデアを練ったり作例を見たりして、諸々の複雑な調整を踏まえてデザインを進めていくのだけど、その調整の部分を考えるのが楽しい。

先日、組版の師匠と通話していたときに、僕の組版に対する嗜好性は、別の趣味や関心――都市計画とドラムに対するそれと共通しているのではないか?という話が出た。

なるほど確かにと思ってその意味を考えていたのたが、その共通点は「線を引くこと」にあるのかもしれない。線とは、そのままでは実現できないような抽象的なアイデアを具現化するために必要となるような、基準となるもののことである。

都市計画の場合は構想レベルのアイデアにプランや規制という形で線を引き、ドラムの場合はメロディーやコードにビートという形で線を引く。組版の場合も、文章データを視覚的にきちんと表現するために、レイアウトグリッドの設定からフォントやルビ、その他諸々の細かい設定を行う。

 

いずれにおいても、線を引くためには多くの「調整」が必要となる。その調整とは、一人の思考の中だけで処理できるようなものもあるし、他人との合意形成の中で解決されるようなものもある。いやむしろ、多くの場合、一つの大きな調整を細かい調整の単位で見たときにその両方が含まれてくるので、自分で処理する部分と他人と合意形成する部分を往復する必要がある。そういう意味で、調整は決して簡単なものではない。

だけど、良いものをつくるためにはその調整がとてもとても大事になってくる。そう考えているから、僕は線を引くことに夢中になっているのかもしれないねえ。